SANKOU

丹下左膳餘話 百萬兩の壺のSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

見た目もみすぼらしくどう考えても二束三文にしかならないこけ猿の壺に、実は百万両の価値があるということが分かったために起こる人情喜劇の傑作。
こけ猿の壺は足蹴にされるし、ぞんざいに扱われクズ屋に売り払われてしまうし、果ては金魚の入れ物にされてしまう。いつ割れるんじゃないかとハラハラさせられる展開が面白い。
台詞のおかしさはもとより、編集の仕方も巧みで思わず声に出して笑ってしまうシーンも多かった。
お藤は父親を亡くしたちょい安に対して「誰があんな子にご飯なんか食べさせてやるもんか」と言ったのに、次のシーンではちゃんとご飯を食べさせているし、「竹馬なんかに乗るもんじゃありません」とちょい安を諭したのに、その後のシーンでは彼に竹馬を教えている。
何より丹下左膳とお藤の掛け合いが絶妙で、二人とも口は悪いがとても人情味にあふれているのが分かるので、観ていて心が暖かくなるシーンが多かった。
印象的だったのは博打で負ける丹下左膳にちょい安が「おじさん負けると唸るんだね」と冷やかすシーン。
その後帰り道に丹下左膳はちょい安の父親を殺した敵の男と出くわす。
ちょい安に凄惨な場面は見せたくない丹下左膳は、10を数えている間に目を瞑っているようにちょい安に指示する。
そしてその間に丹下左膳は一発で敵の男を打ちのめす。男は呻きながら倒れる。
ちょい安が男を見て「なぜ唸ってるの」と丹下左膳に尋ねると、彼は「博打に負けたんだろ」と返す。
丹下左膳が金を工面するために、こけ猿の壺の持ち主である源三郎の元へ道場破りに訪れるシーンも傑作だった。
こけ猿を探すふりをして、女目当てに矢場へ通う源三郎が何とも憎めないキャラクターなのも良かった。
丹下左膳役の大河内伝次郎の存在感も素晴らしかったが、お藤役の喜代三の開けっ広げで美しい佇まいに心引かれた。
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