こーひーシュガー

ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界のこーひーシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ディズニーの大コケ映画『ジョン・カーター』(2012)の赤字額を軽々と凌いだディズニー最大の黒歴史となった本作。
だが、これは過小評価されていると思う。
そもそも宣伝の仕方が悪かった。もっと大々的に売り出せば少しは変わっていたのかもしれない。

冒険家の親子が意見の食い違いから袂を分かち、数十年が経った。息子は冒険中に見つけた植物パンドからエネルギーを見出し電気を発明、街を支える農夫となっていた。しかし、パンドの危機に直面。パンドを救う冒険に出るが…という話。

まずこれは環境問題、資源問題を描いている。
そして『ガイア理論』を提起しているのだ。ガイア理論とは1960年代にイギリスの科学者ジェームズ・ラブロックが提唱した、地球を一つの生命体とする仮説である。私達人類は地球に感染するただのウイルスにすぎず、地球を何年にも渡って破壊してきた。そんなガイア理論が今作で描かれている。
地球を救うには資源や環境を守らなければならない。人間のエゴだけでこの星を破壊している。そんなメッセージがこの作品には込められていた。

異世界の光景は「アバター」シリーズを彷彿とさせた。
そして親子の絆を描いた本作だが、どうもキャラクターの感情の変化が不自然に感じた。何と言うか、情緒不安定なキャラが多かったように感じる。
そしてこの作品の最も許せないこと。それは近年のディズニー映画によく見られるメインヴィラン不在問題に対してディズニー側がこの作品を通じてその答えを出したのである。その答えはクレイド一家3代に渡る親子がカードゲームをしているシーンにて言及された。ヴィランがいないゲームはつまらないとイェーガーとサーチャー親子が不満を言うと、サーチャーの息子イーサンの口から耳を疑うセリフが飛び出した。
「ならあんたらがヴィランだ!」
おそらくこのシーンを見てディズニーと決別することを選んだファンがいても何もおかしなことはない。
ヴィラン不在を批判する観衆そのものがディズニーにとってはヴィランなのだ。

ストレンジ・ワールドは良くも悪くも画期的な映画だろう。ポリコレだらけと言われたり、最近のディズニーを象徴するような作品である。
個人的には好きなたぐいの映画だった、と同時にディズニーへの不信感も高まる存在となったことも否めない。そういった意味では存在感の大きい映画だろう。