すずきじみい

ガール・イン・ザ・ピクチャー:写真はその闇を語るのすずきじみいのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

監督: スカイ・ボーグマン

20歳という若さで、不遇な一生を終えた女性と彼女を長い年月、精神的、肉体的、性的に虐待し続けた男の話(実話)


男性が女性を見て性的興奮を発するのは、
自分のDNAをこの世に残したいと思う男性の本能のせい、神が定めた自然の摂理。
そのオスの本能を理性で制御できる人とできない人がいるのは、人間も所詮は動物だからなんだと思う。

ただ、女性も又、理性で制御できない何かを持っていると思う。
性的虐待被害者の中で、逃げたり、助けを求める機会があってもしない人がいる。
理由は、恐怖に支配されて、そういうアクションを起こす気力が失われちゃってるからと言われる。
この実話の被害者、シャロン・マーシャル(本名ではない)も、子どもの頃から父親に精神、身体、性的に虐待されて育ってきたから、それがどんなに異常な事なのか気がつかなかったのかもしれない。
いやいや、常に成績優秀で、航空宇宙技術士になるという目的の為に更に一生懸命勉強して、大学の奨学金を勝ち取るくらい賢い女子高生なのだ。自分と父親の関係がよその家と比べておかしい、という事は気づいてたと思う。
又、学校では、正義感強く、友情に厚い、とても前向きな性格だったと語られる彼女に逃げる気力がなくなってたとは思えない。
結局、二人の関係性=どうしてあんな父親のとこから逃げないのか?
は、本人同士にしか分からないのではないだろうか。

1993年に、脚本家、野島伸司が世間を唖然とさせたドラマ『高校教師』では、実の父親と関係していた女子高生のヒロインが、運命的に出会った高校の教師と普通の健全な恋愛関係になった後も、まだ父親と肉体関係を続けているという……
本当に愛する人ができたんだから、歪んだ関係は断ち切ろうとするはず、肉体関係を迫られても拒むはず、と私みたいな単純な女には全く理解不能で、結局彼女は魔性の女?悪女?と不思議で仕方なかった。
シャロンにも同じ様な臭いを感じる。
全てを受け入れてしまう順応性、許してしまう母性本能……
ダメンズラバーの女性にも感じる、理性とか道理を超越した何か…母性の弱点?
が女性の潜在意識内にある気がしてならない。

でも、それを踏まえても、
この親子の関係は特異だと思う。
すざまじい精神的暴力…親友が見てる前で、父親にレイプされるという、
そんな恐怖を味わっても、その男を捨てて、真っ当な幸福を求めようとしないシャロンと、ケダモノの様な本性を抱える育ての親ウォーレン・マーシャル(本名フランクリン・フロイド)の関係は、被害者と加害者という単純な括りには当てはまらない、底なし沼の様な人間性の不可思議としか思えない。
残されたシャロンの写真(=家の外で他人に見せていた顔)を見ると、綺麗なだけでなく、本当に優しそうで、凄惨な闇を背負ってるなんて絶対に分からない、明るい親しみやすい笑顔ばかりなのも、人間の二面性をまさに象徴していて、この実話は、小説家や映画作家達が捻り出すどんな深い人間ドラマよりもはるかに深い人間ドラマだと思う。