ワンコ

MIRRORLIAR FILMS Season4のワンコのレビュー・感想・評価

MIRRORLIAR FILMS Season4(2022年製作の映画)
4.0
【減速する素晴らしき世界】

レビュータイトルは、「Slowdown」というダニー・ドーリング著の邦題タイトルだ。

作品としては、ちょっとクオリティにバラツキがあったように感じた。

ただ、どれがどうだとは敢えて言わないが、結構な数の短編の中で、良いなと思えそうなものが、いくつかあれば一定の満足が得られると考えられそうな人は観ても損はないと思う。

僕自身のことを言えば、予想通り良かったと思える監督の作品もあれば、あまり存じ上げないが、いや面白かったというものもあった。

最近、Forbesの記事にもなったが、国連開発計画(UNDP)が、過去2年間に起こった未曽有の危機を背景に人類の進歩が5年後退したとのレポートをまとめた。
未曽有の危機とは、新型コロナウィルス感染症のパンデミック、気候変動の悪影響、ウクライナ侵攻に代表される国際的な紛争を指していて、こうした世界的な規模の危機が、人類の教育や平均寿命、生活水準の数十年にわたる進歩を後退させ始めているのだとしている。
この報告の背景にあるのは、人間開発指数と呼ばれるものだが、国内総生産(GDP)と並んで豊かさを評価するものとされている。

僕たちは、コロナ禍で何を考えただろうか。
気候変動で何が必要か考えただろうか。
ウクライナ侵攻ではどうだろうか。

コロナ禍については、これまで加速した社会で享受していたものが受け取れなくなって、仕事やコミュニケーションがままならない状況に直面し、生活が一変した人が多かった。
だが、人の移動が制限されたことで、これまでの移動が過度で、いったんWebなどを通したコミュニケーションが容易にできると、交通渋滞は減り、世界中の飛行機の飛ぶ頻度も激減し、空気がきれいになったことも事実だった。
経済が豊かになれば、皆、民主主義を渇望するに違いないとのいわゆる西側諸国の淡い期待もロシアや、中国などの専制主義的な思考のなかでは、政権を不安定化させる要因にすぎず、西側で開発されたネットは検閲も要因にし、不要と判断された情報は遮断、国民を統治する目的のプロパガンダを容易にし、西側というより、西側の民主主義をも標的としている。
数十億人が住む、或いは、潤沢な資源を保持しているといった経済的なメリットばかりに目がいってしまった自由経済主義の盲点だった。
このままでは、民主主義の下で拡大した自由経済主義が、専制主義に隷属する結果になりかねないのだ。

映画のように、コロナ禍で一変した生活や環境と向き合い、自分自身を見つめ直し、前に進んだり、「変化」を受け入れる姿勢はとても重要だと思う。
それは、幾多の困難を乗り越えてきた人間としての知恵や力でもある。

ただ、それに加えて、もっと僕たちの社会を俯瞰して見ることが出来るような視点をもたらすことが出来れば良いなと思う。

「加速する世界」がすべてではないことは、僕たちは、もう理解しなくてはならない。
ワンコ

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