おおつか

野いちごのおおつかのレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
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老年期の孤独なエゴイストの回顧録という湿っぽい話ではあるけれど、観た後は爽やかさが残る。映像が麗しく音楽も良かったし、おもっていたよりずっとテンポがよかった。

老いや孤独という不条理と向き合う人生がテーマのこの映画で、神の存在が議論されるのも当然で、不条理について神学者の卵は答えを神に求め、医者の卵は『己の無意味に立ち向かうのが現代人だ』と語る。

主人公の老人は神の存在について尋ねられ、神の"しるし"として美しい詩を吟じる。

美しい詩や青春期の"野いちご"、幼い時の両親の思い出は、それが真実ではなく幻想的であっても、不条理な人生を慰める甘美であり、その甘美が穏やかな眠りに至らしめる。
なんとも巨匠っぽい映画でした。これが長編3作目ってのはすごいなぁ。
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