Jun潤

金の国 水の国のJun潤のレビュー・感想・評価

金の国 水の国(2023年製作の映画)
4.0
2023.01.27

予告を見て気になった作品。
テレビシリーズ放送の有無に関わらず劇場アニメーション作品公開の波はしばらく収まりそうにありませんね。
原作の存在は知りませんでしたが、何やら話題になっていそうだし、主演の賀来賢人はアニメ声優初挑戦なものの、ヒロインの浜辺美波は声優経験もあり実力も十分のため安心、異世界系の話ですが脚本は『プリキュアシリーズ』にも参加している坪内文ということで、不安点を全部解消してくれている安心設計。

かつて些細なことから戦争を始め、以来小競り合いを繰り返してきた隣国同士のアルハミトとバイカリ。
長年に渡る対立から国境に高い壁を築いて断絶していた両国だったが、過去の王族が交わした契約により、アルハミトから美しい嫁をバイカリへ嫁がせ、バイカリから賢い婿をアルハミトへ入れることに。
結局嫌い合う両国が送り合ったのは犬と猫。
婿を貰うことになっていたアルハミトの王女・サーラと、嫁を貰うことになっていたバイカリの青年・ナランバヤルは困惑するが、平和のためにそのことは内密にしていた。
しかし、ひょんなことからサーラとナランバヤルは出会ってしまう。
ナランバヤルのことを来るはずだった婿とは知らず、姉たちの追求から逃れるために婿役を願い出るサーラ。
ナランバヤルはアルハミトの様子を見て国政を察知し、国交を開くチャンスだと考え即座に行動を開始する。
一方のサーラはバイカリに迷い込み、ナランバヤルには妻がいるものと勘違いしてしまう。
果たして2人の行く末、両国の運命はー。

うーむ、、。
十分良い出来だったのだけれど、あと一歩傑作には届かなかった印象。
というか序盤の最大風速が強すぎた。

まず作画については、食べ物と動物の作画良ければ結果ヨシなんですよねぇってくらい作画が良い。
他にもどちらかというとギャグか日常アニメ寄りのふんわりキャラデザのサーラとナランバヤルに対し、国の主要人物たちは作品が違うのかと思うぐらいの変わり様。
これはストーリー的にも2人だけはラブコメを走ってる感じが際立ちますし、設定的にも戦争とは無縁だけど平和のために必要な特別な存在として差別化されていたと思います。
あとは風景などここぞ!というところへの作画力の割き方が良かったですね

設定的に魔法などの類は出てこないものの、聞き馴染みのない国名に人名など、覚えるのは少し難題。
しかし覚えさえしてしまえば、両国それぞれが抱えている問題もシンプルかつ分かりやすいし、解決方法も一番簡単で難しいみんな仲良く。
他にもアルハミト国内の派閥争いも入り込んでいましたが、過去回想などで平和への願いを補完して構造も分かりやすい。
掘り下げが浅いキャラもいましたが、まぁ平和が一番なのは余程でない限り普遍的ですからねぇ。

ストーリーとしては、序盤こそ勘違いから始まるニセモノ夫婦!?な非常にアニメらしい展開。
そこに両国の思惑という要素が入ってくるわけですが、作中キャラ(主にサーラ)はわかっていないけど観てる側はわかってる形で進み、そこにラブコメが入ってくるのだからもーうヤキモキワクワクキュンキュンのエモ。
まぁ後半エモが失速して両国の思惑の渦中に巻き込まれるわけですが、、。
大枠的には大きな歴史の流れの中の一つの転換点といった感じで、作中で大勢の人の気持ちの変化や精神的成長があるわけではなく、過去の戦争から既に出来ていた平和への願いを地盤に、サーラとナランバヤルの出会いが堰を切ったような感じですかね。
キリパッパの行動原理がイマイチでしたが、まぁどの世界にもああいう平和よりも利権みたいな人はいるよねってことで。

演技については完全に主演2人ですね。
浜辺美波は安定以上で、最初こそ鼻声?と思いましたがサーラのキャラデザを考えるとマッチしていて、キャラのための声作りが伝わってきました。
賀来賢人もアニメ声優が初めてとは思えないくらい、本職声優さんとの掛け合いも完璧でしたしナランバヤルの軽さや賢さ、芯の強さが滲み出てくる演技でしたね。
Jun潤

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