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ブロンドのjellyfishのレビュー・感想・評価

ブロンド(2022年製作の映画)
3.6
そ、そんなに悪くないよ…?

北関東のど田舎にある私の実家は無駄に広く、部屋数の多い家だった。
ある時、叔父が数十年前に使っていた部屋にたまたま入ると、古びたポスターが1枚だけ貼られているのが目に入った。
ゆるくカールした金髪、印象的なホクロ、ぽってりとした赤い唇、大きな胸に細くくびれたウエスト
そう、マリリン・モンローのポスターだった。
私はすごく不思議な気分になった。
遠く離れたアメリカで有名になった彼女は、海を渡り、極東のこんな田舎の誰も使わない埃まみれの部屋で笑顔をふりまいている。
幼かった私にも、彼女が男性に向けてその笑顔をふりまき、体をしならせていることは分かった。
そうした彼女の性的な魅力にひかれ、叔父がポスターを貼っていたことも同時に気付いた。
嫌な気持ちにはならなかった。
むしろ、彼女の魅力の凄まじさに圧倒された。

マリリン・モンローのそうした魅力(魔力と言った方が良いのかもしれない)にマリリン自身が飲み込まれ、振り回され、身を滅ぼしていく様が描かれている。
時代が熱烈に求めた“セックスシンボル”という彼女。
内気で繊細な“ノーマ・ジーン”と言う本来の彼女。
本当の自分からどんどんかけ離れた“マリリン・モンロー”を求められ、彼女がどれ程苦悩したことか。

モノクロとカラーが切り替わったり、画面のサイズもコロコロ変わる。
映画を見ていると思ったら写真を見ているような気分になったり、フィクションを見ていると思ったらドキュメンタリーを見ている気分になったりした。

後は、何といっても、アナ・デ・アルマスの演技が凄まじい!
これでもう引退するんじゃないかってくらいの熱量をぶつけてくるから、見ているこちらも気を抜けない。

確かに、伝記映画だと思って見ると肩透かしを食らうと思う。
説明はほとんどないし、登場人物も名前さえ分からない人が多い。多分、時系列もバラバラ。
マリリン・モンローと言う有名女優の映画じゃなくて、ある女性の数奇な栄枯盛衰だと思って見る方がいいかも!
とにかく、アナ・デ・アルマスの演技を1度見て欲しいです!
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