Cisaraghi

女経(じょきょう)のCisaraghiのレビュー・感想・評価

女経(じょきょう)(1960年製作の映画)
-
オムニバス三篇、どれもすごく面白かった!女経の意味は不明だが、女と経済を足した造語?エコノミック・ウーマンといったところか。1960年当時の東京や京都の映像が貴重。

一作目『耳を噛みたがる女』
 またもや文子と浩、いいコンビ。だるま船、当時はあんな所で暮らしていた人がいたのだね。佃、月島、勝鬨などに多かったらしい。安普請のアパートやホテル、犇めくドレスの中に着物が混じる泥臭いバーの女たち。戦後二十年経った日本のハイカラさと貧しさの混交がいい味出してる。ネオンが少なくて暗い銀座の夜景は地方の温泉街のように寂しい。
 はすっぱな文子はハマっているが、浩はいくらドラ息子とはいえ、エエとこの御曹司には見えないね、べらんめえだし。最初から最後まで文子最高だけど、ラストのセリフの言い方が特にいい。

白いオープンカーで飛ばすあの広い大通りはどこなんだろう?今の東京にあんな広い通りはないはず?


二作目『物を高く売りつける女』
 もう、何なの富士子。唖然。
美男美女、ヒッチコック風味なのに、下駄。
ガランとして何もない純日本家屋。木造の不動産屋の事務所。
接近し過ぎだよ、ソーシャルディスタンス。


三作目『恋を忘れた女』
 マチ子さん、着物の立ち姿、歩き姿が何と美しい。『浮草』と同じような苛立ちを抱えたキャラクター。鴈治郎も出てる。ビシバシと采配を振るい、おもむろに煙草を呑むマチ子はんの貫禄は恐ろしいほど。玄人という今では古くさくなった言葉がこれほど似合う女優さんもなかなかいないのでは。
修学旅行専門の、旅館というより宿屋。
人気の少ない京都の町。先斗町。
伊勢湾台風で被災した名古屋の困窮家庭の中学生。

やり手で強かな女たちの、なけなしの純情。富士子とマチ子さんの着物が素晴らしい。最後の着せ替えもお洒落。
Cisaraghi

Cisaraghi