人に信用されない恐怖、自分を信用できない恐怖、それがこの世で最も恐ろしいことだと思い出した。この世でいちばん怖いのは人? ああ、そのとおりだよ。
ホラーを楽しめる人は共感性が低いのだという。映画の登場人物がどんなに怪我をしようと、血まみれになろうと、命を落とそうと、絵空事だから平気なのだと。自分は痛くないし。
ならば私はホラー映画が好きなので、共感性は低いはずだ。人が酷い目に合う映画を好んでみている。平気なはずだった。だが、この映画はキツかった。完全に現実とリンクしてると感じたから。
「心が現実を作るのだ」
登場する悪役の言葉だが、本当にそのとおりと思う。だってその人が思ったことはその人の現実なのだ。
そんなことないよ、と誰かが言う。君の妄想だよ、とたしなめられる。
違うのだ。その人の心が、その人の現実を作るのだ。悪魔や怪物は心の中にたやすく生まれてくるのだ。
さらに怖いのはその怪物は誰にも見えないこと。訴えれば訴えるほど窮地に立たされる。そしてだんだん自分が信じられなくなる。あとはもう叫び続けるしかない。
この恐怖はけっして架空のものではなく、いつ自分を襲ってくるかわからない。怯えて生きろ。悪魔にそう言われているようだ。
またこの映画は、「信頼の置けない語り手」の手法で何度も殴りつけてくる。どんな展開であっても、鑑賞者は幕間にいったん脳と心をリセットし、物語の続きに備える。だが今まで見てきたものが非現実だとわかるたびに、体験が巻き戻されストレスが蓄積してゆく。しんどい。監督は人が嫌がるポイントをよく知っている。拷問者の素質があるので、転職したほうがいい。
そして物語は最悪の結末を迎える。願わくばそれも妄想であってほしいと、心より願う。
大きなグロはないが、犠牲者の死に様や怪異の造形はモロ私好みで、それも評価が高い。損はなし。
猫は……😱