Jun潤

あつい胸さわぎのJun潤のレビュー・感想・評価

あつい胸さわぎ(2023年製作の映画)
4.2
2023.02.05

高橋泉脚本×奥平大兼出演。
予告を見た段階では、女性の胸に端を発する物語のよう。
大っぴらにはあまり言えませんが、なんだかんだ男女の恋愛関係には大なり小なり関係があるおっぱいのお話。
それをどう親子と恋愛のドラマに落とし込むのか、初日満足度も高く、期待値は上々。

和歌山県の港町で暮らす昭子・千夏親娘。
女手一つで娘を育ててきた肝っ玉母ちゃんと、芸大でのキャンパスライフをスタートした千夏。
明るい未来が待っているかに見えた親娘を、千夏の乳癌という現実が阻む。
大人と子供の、“恋”と“性”の話。

ター坊、お前の勝ちだよ……。
最後のター坊に全ッ部持ってかれましたわ。

お話としては、子供から大人へと成長していく千夏の、まだ経験のない男性とのお付き合いと、それに対する胸の話を軸に、昭子と千夏親娘に関わる人々の恋愛を描いた群像劇。
千夏が大学生という自由を手に入れ、新たな経験をしていくのかと思いきや、年頃的にうざったい親の干渉や、判明した病魔によってその道が狭まれてゆく。
序盤の千夏にまぁ恋に恋するザ・女子大生って感じが満載だし、その恋の相手が奥平大兼演じる幼馴染で大学も一緒のこうちゃんだということはすぐにわかりますし、トラウマであり初めて千夏の胸を騒がせたのもこうちゃんだという、ある意味どんでん返しもあって、ストーリー的にも楽しめました。

作品の軸となる千夏のことがしっかり描かれていたからこそ、そこに肉付けされる昭子の新たな恋の予感や不器用な木村さん、大人なトコちゃんなど、千夏を支えてくれるのかと思いきやブルンブルンに翻弄してくる周囲の存在。
ター坊がいい緩衝材になっていましたし、それぞれダメでもクズでもなくただ純粋で真っ直ぐだからこそ、仕方がなくもつれてしまう人間模様が描かれていました。

目の前のズワイガニしか見えないように、今は自分の胸がどうなってしまうのかしか考えられない、これからの恋愛のこと、結婚のこと、出産のことなんて考えられないというのも粋な描写で、大人だからこそ考える、子供だからこそ考えられない先々のことというのがよく伝わってきました。

常盤貴子の肝っ玉母ちゃんぶりも良かったですね〜。
常盤貴子・永作博美・尾野真千子の三大肝っ玉母ちゃん女優。
それもただの肝っ玉母ちゃんではなく、いい歳になってもいい人に恋をして、20年近く子育てをしていても1人の人間として感情を漏らし、娘に対しても通例的な親としてではなく、時に友達のように、時に女同士として、皮肉を言い合いながらも無償の愛を与え、千夏もそれに応えていることが沁みました。

恋愛におっぱいは必要か。
これは難しいですね〜。
難しいとか、大事じゃね?とか思っちゃう僕はまだまだガキなのかもしれません。
おっぱいの有無なんて関係なく人を好きになる、無い胸の話も簡単にできる、くらいが大人なんだと、今作は高らかに描いていました。
たくさん悩んで、色んな人と話して、答えを出して、また考えて。
誰かに恋をして、フラれて、また好きになって。
そうして“大人”になっていくのでしょうね。
Jun潤

Jun潤