カイト

エゴイストのカイトのネタバレレビュー・内容・結末

エゴイスト(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

11月1日東京国際映画祭にて鑑賞。
何度も何度も涙が溢れてしまう心の深いところを抉ってくる凄まじい作品だった。

この作品は前半と後半で全く色を変えており、一度に2本の映画を観たような感覚を抱いた。
前半は鈴木亮平と宮沢氷魚のゲイカップルが愛を育てる姿を丁寧に丁寧に描いていて観る人を2人に寄り添わせ、一喜一憂する王道の恋愛映画の要素を含んでいて、
後半は主人公が恋人の母の登場による母子の愛に物語がシフトしていき、話の展開が素晴らしく、目が離せなかった。

鈴木亮平の演技は言うまでもなく素晴らしく、コウスケが抱く一つ一つの感情の機微も繊細に捉えていた。特にリュウタを見る愛おしさそのものの瞳は美しかった。

また本作で強烈なインパクトを残した宮沢氷魚の演技も凄まじかった。無邪気で健気だがどこか儚い青年リュウタが持つ愛情から心の闇まで余すことなく表現していた。

リュウタの母を演じた阿川佐和子も素晴らしかった。リュウタを通してコウスケと交流し、じっくり深い関係を築きコウスケを受け入れる姿に涙が止まらなくなった。

本作で特に印象的だったのはコウスケとリュウタの母の金銭のシビアなやり取りだった。自分の愛、エゴを貫くコウスケの気持ちを素直には受け取れないリュウタの母どちらの気持ちも痛いほどわかってしまい、観ているだけで切なくなってしまった。

観終わった後、自分の感情がぐちゃぐちゃになるほど揺さぶられた。恋愛面での愛情、親子間の愛情そのどれもが個人から相手へ伝わるものだからエゴになり得るという難しいテーマを正々堂々描き切った作品だと思った。
今年観た中で1番良かった。
来年2月もう1度鑑賞したい。
カイト

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