桜新町

エゴイストの桜新町のレビュー・感想・評価

エゴイスト(2023年製作の映画)
4.3
とても良かった。セリフも登場人物も最小限で、観客が考えたり想像する余白のある映画。とてもリアリティがあって、入り込めた。キャスティングも素晴らしい。鈴木亮平さんは浩輔そのもので視線や表情とかで浩輔の感情の機微が伝わり、彼が泣くとこちらまで胸が痛くなる。宮沢氷魚さんは本来大男なのに健気で可愛く儚く見える。

過去の自分への罪滅ぼしのように龍太と龍太の母へ見返りを求めず愛を捧げていく浩輔を見て、病院でのボランティアを思い出した。学生の時に行った難病の子供たちの家族をサポートするボランティアには、過去にお子さんを亡くした親御さんがたくさんいて。彼らはあの時してあげたかったけど、できなかったことを今誰かにすることで過去の自分を救っていると話していて、20歳そこそこの私は理解できなかったのだが、この映画を見てようやく腑に落ちた気がする。取り返せない過去を振り払うように他者に愛を注ぐことはエゴなのか。理由はどうであれその愛で救われた人がいるなら、それは愛なのだろうと。

試写会後には監督のティーチインもあって映画への理解がより深まった。この映画が単なるBLで収まらないのは監督含めスタッフ皆さんが描く対象にリスペクトをもっているから。
あと何が雄弁にものを語るかを意識して撮ってるという話も面白かった。必ずしも全体を映さず、役者さんの表情や洋服とか、1番メッセージが伝わるものを選んでると聞いて興味深かった。あと監督が考える"死"についても素敵だな、と。悲しいだけの死は使わない、それによって誰かに前向きな変化が起こったらと願ってると仰ってて信頼出来る人だなと思った。
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