このレビューはネタバレを含みます
序盤からなかなか描写がハードでビビる。
が、この映画は、ゲイであることをごく自然に扱っている気がした。
焦点を当てているポイントが、性的嗜好にまつわるエトセトラではなく、そこを超過した人と人の関係性だったように思う。
エンタメ界でも「LGBTQを知ろう」から脱却し、一個人として扱うように変わってきているのだなと感じた。
「エゴイスト」利己的な人のこと。
果たしてこの映画に、エゴイストは出てきたのか…。
龍太に一緒に生きる道を提示した浩輔。
それが結果的には、龍太を死に追いやり(因果関係は不明だけど)、龍太の母の病の発見を遅らせてしまった。
浩輔の「愛する人を失いたくない」というエゴ故に、二人は死んでしまったのか…?
うーん…
でもやっぱりエゴとは思えないんだよな。
だって、龍太はこの上なく幸せそうだったから。
浩輔と一緒にいるとき。親に本当の仕事を言えると言っていたとき。
そして、体を売る仕事が苦痛になるくらいに愛する人ができたということに、龍太はとても幸せを感じていたように思う。
結果論で語ってしまえば、龍太は死んでしまったのだから、バッドエンド。
だけど、badだけで終わらせていいのかどうか。あの選択が間違っていたとはどうしても思えない。
(もう少し体の負担が少なくなるように助けてあげることはできたのかもしれないけれど…
それは、今だから言えることだし、誰も浩輔の精一杯の援助と提案を責めることはできないように思う。
それに援助し過ぎないというのは、浩輔なりの優しさと配慮だったように思う)
これ以上に愛することってできるのかというくらいの愛に私には見えた。
愛する者を失った悲しみは、並大抵のものではないだろう。そして、それが自分の責任かもしれないと思うとき、
残されたものは、自分の行動を顧みて後悔を重ねるんだろう。
あの時出会わなければ、素直に別れていれば、あんな提案しなければ…
少なくとも龍太は生きていたのかもしれない。
「エゴイスト」という言葉は、浩輔が自分自身を蔑むために使った言葉なのかもしれない。自分を悪者にし、憎むことで行き場のない感情をやり過ごしているのかもしれない。
これからも辛い気持ちを抱えながら生きてゆくのであろう浩輔。
彼は、自分の過去を受け入れることができるのか。龍太との過去をどのような形で心に残すのか。
それが知りたいと思った。
苦しみが癒えることは決してないと思うけれど、自分を許せる日がいつかきてほしい。
浩輔は天国を信じないと言っていたけれど、いつか二人が天国で再会できたらいい、そう願わずにはいられなかった。
浩輔がすごく魅力的な人物だったし、鈴木亮平が本当に本当に素晴らしかった。