鈴木ピク

ハンガー・ゲーム0の鈴木ピクのレビュー・感想・評価

ハンガー・ゲーム0(2023年製作の映画)
3.7
ブロック分けされた敗戦国の子供たちが殺し合いに興じさせられ、おかしなシステムだとは思いつつも戦勝国の子供たちは彼らの「教育者」(「メンター」は訳さず「メンター」でよくないか)としてペアになり殺し合い開始までの時間を付き合う。
戦災孤児から富裕層にまで上り詰めたスノーは反抗的だが歌で人々を魅了する少女ルーシー・グレイのメンターとなり、彼女が殺し合いに勝利は出来ずともひと時観客の心をつかむヒロインに育て上げようとするが、、、

シリーズ前日譚で、わざわざ説明しなくてもいいルールや段取りの多くを省ける代わりに、意表を突く要素が入ってきた時のサプライズが続いて飽きがこない。
と同時にこのタイミングで見るとリアルにガザ地区の子供たちと重なって見える光景や、個々の痛ましい姿が「今」として伝わってきて、こんなに切実な話だったのかハンガー・ゲーム、という再発見があった。
そして子供たちを「非日常」と切り捨てたエリート層の若者が次第に「彼我」の境界を乗り越え、、、

とても真摯で必要なエンタメだと思う。

いや、想った。ここまでは。
続く「第3部」の冗長さと退屈さ、予定調和ぶり。
「前日譚」ゆえの辻褄合わせが(一応メロドラマとして成立はしているが)明らかに第2部のバトル・ロイヤルよりつまらない、そもそも面白くなろう訳もない。
革命の物語への視点としてこういう話をやりたいフランシス・ローレンスの作家性はわかるが、映画には「切り上げ時」があって、本作はスノーが酒場で「それ」を目撃した瞬間に切り上げるべきだっただろう。

あるいは、2023年末の今この映画を撮っていたら、編集していたら、そうしたのかも知れない。
鈴木ピク

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