七色星団

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IVの七色星団のレビュー・感想・評価

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)
3.8
参った。
スタローン万歳!

大ヒットはしたけど作品としてはロッキーシリーズの中でも特別異質だった『ロッキー4』。個人的には平行世界のロッキーみたいな誰かが活躍する作品。それが僕の『ロッキー4』の評価だった。
とは言うものの、ロッキーのトレーニングや試合シーンの迫力は前作を遥かに凌ぎカタルシスを感じたのは否定し難い事実で、実際何十回と見てる訳なんだけど(笑)

ロッキーという映画はいつだってキャラクター同士の心のぶつかり合いを描いてきた筈なのに、80年代に流行った歌に合わせて登場人物の気持ちを歌詞に乗せてくスタイルには本当に違和感があった。勿論、本作からも数曲のヒット曲が生まれ、♫ Heart's on Fire はもう何度聴いたか分からないほど好きなのだけど、それとこれとはまた別の話。

何が違和感ってロッキーとエイドリアンの関係。
誰にも相談せずに、迷うことなく、感情の片鱗すら見せずにただ俺流を貫いて突き進むロッキー。そんなロッキーに対して妙に物分かりの良いエイドリアンという二人のやり取りは僕の中ではあり得ない。二人はいつだって心でぶつかり合って互いを理解して、二人で物事を解決していく姿に僕ら観客は心を動かされたのだから。

そして、この『ロッキーVSトラゴ』です。
再編集版の噂を聞いた時は嫌な予感しかしなかった。いくら編集したって筋道は変わる筈もなく、更に酷くなるだけじゃないのか?と。

ところが!
当時からストーリー構成の中にちゃんとした(失礼!)物があったんだな。
その膨大なフィルムから再構築しされた本作は新たなシーンを加えた目新しさだけを目的としておらず、更に各シーン毎に微調整を加え、各キャラの造形に深みも与えた。
初回公開から延々と何十年も見てきて、ストーリーもセリフも覚えちゃってる程の作品なのに、不覚にも涙腺が緩むこと多々あって、一緒に行った息子に”親の泣き姿”を悟られないよう苦労した(笑)

簡単に言っちゃうとロッキーとアポロのファイターとしての矜持に焦点を当て、”4”に足りなかったロッキーシリーズらしい本来の熱い人間ドラマとして復活したってこと。
更に言うならドラゴ。本当に微々たる変更だけど、血の通った強さだけを求める若者として見て取れる良い改変に、スタローンの『ロッキー4』への取り組みの本気度が分かるってもんです。

これで今回の再編集版により1作目からクリードまで引っくるめて、シリーズ全体の温度が丁度良い塩梅にバランスが取れた(と僕は感じてるけど)のは本当に嬉しい。

こうなったらスタローン自身が失敗作と烙印を押していた『ロッキー5』も再編集版、やっちゃう?
でも僕は”5”、結構好きだったりするんだけどね。
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