七色星団

スモークの七色星団のレビュー・感想・評価

スモーク(1995年製作の映画)
4.1
U-NEXTで配信されてること知り懐かしくて約30年振りに観たら、初公開時の鑑賞後の余韻が凄かった記憶が蘇ってきた。

登場人物たちの真実と嘘、これらを巧みに使い練られたストーリー。

基本的に"一章 ポール"のように各章毎、特定の人物にフォーカスを当て進む物語で、そのポールは作家というバックボーンからも豊富な知識があり、本編で披露する幾つかのトリビア的なネタは、そのどれもが彼自身の台詞にもあるように"物語の勘どころ"を抑えた与太話が多いように思える。
また二章以降のオーギー、ラシード、ルビー、サイラスなど、各章の主たる人物は皆、嘘をつき、または嘘に翻弄される人達ばかり配置されており、嘘は効果的に物語のアクセントとして機能してる。

だけど、それらの嘘はどれもが相手を徹底的に打ちのめすような酷いものではない。
・相手を思うがための嘘。
・真実を告げるタイミングを見計らっている嘘。
・分かってもらえる―という相手への信頼感こそが根拠の嘘。
その嘘の根底にはどれも優しさが漂っている。温かさが感じられる。
その最たるエピソードがラスト、オーギー・レンのクリスマス・ストーリー。
優しさから付く嘘と、嘘と分かって信じてる振りをする嘘。
ここはやっぱり目頭が熱くなったなぁ。

そう言えばルビーの娘役、フェリシティを演じるアシュレイ・ジャッドを初めて見たのは本作。
寂しさ堪えて歯を食いしばりつつ、「でもそんなの分かって堕ちたのよ、私は」的なやさぐれ表現力が、出始めの女優さんとしてはちょっとレベチって感じで凄く目を引いた。

ハーヴェイ・カイテル演じるオーギーが営む煙草屋で煙草をふかしながらどうでも良いことを語り合うオッサン達の姿が良い。
時に大真面目に、時にジョーク混じりで語られる話はどれももっともらしいエピソードもあるが、今なら「で、エビデンスは?」ってツッコまれることこの上ない話ばかり。でも、こういう無駄話をしてる時間こそが一番楽しかったりするじゃない。

インターネットで何でも直ぐに調べられる便利な時代、そこにも"嘘と本当"は混在していて根本的には世の中は変わっていないようにも思える。でも一番変わったのは、こういう嘘のような本当の話、本当のような嘘の話を、顔を突き合わせて半笑いしつつも大真面目に語り合う機会が無くなってしまったことじゃないだろうか。

初見時以来、約30年振りに観た本作には改めてそんなことも感じました。
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