サンヨンイチ

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IVのサンヨンイチのレビュー・感想・評価

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)
3.8
映画編集って
こんなに受け取られ方を変える力があるのか、と
まずは驚かされる。
当時も思うところはあったろうが、
現代の価値観に照らし合わせ、
違和感を違和感として切り捨てる英断。

いかにもストーリーの根幹を揺るがさない
音楽パートは何故かそのまま残しつつ、
40分以上のシーンを差し替えたのだから
むしろそのまま残っているシーンを探す方が困難と言える。

淡々粛々とラストに向かっていく旧作は、
作品全体に通底する機械作業的な雰囲気をどこかに感じさせていたが、
本作では
その象徴とも言える未来ロボットくんを排除し
アポロ、エイドリアン、ドラゴの心情の機微を色細かに反映した。
(結果、道連れ的に置き捨てられたロッキーJr.の存在は忘れてはならず、かえって『クリード』への説得力を持たせるのだが。)

特に、エイドリアンとアポロの口論のシーンでは
二人の親密さが顕になっており
家族ぐるみでの距離感が良く分かる。
それでいて、
エイドリアンというリング外からの見立ての正直さは、
アポロ視点から言えば
勝敗や生死という2択に縛られた無粋さでもあるという、
相容れない意思のぶつかり合いがバチバチと音を立てている。
要は
アポロ戦までが明らかに丁寧に描かれ、
序盤の引き込み方が上手くなっているように思える。