タクマ

映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)のタクマのレビュー・感想・評価

3.8
「ありのままの僕らが未来を作る」
宗教問題、多様性、去年に引き続き奇しくもタイムリーな話題を題材に物語を描いた本作の舞台は誰もが完璧になれる理想郷。パニック障害になってから「普通ってなんやろうか?」って悩んできたりまた最近この映画で描かれる様な事で考えさせられる事もありでキッズ向け映画と言う枠を超えてかなり濃い映画時間になりました。
格差も争いもなく誰もが平等な理想郷。そこではジャイアンにも殴られないしスネ夫に意地悪もされない。でもみんな同じ無個性だと言う事が本当の自分なのか?と問われると…静かに訪れる周囲の変化は不気味でホラーっぽい一方で段々と本来の個性を無くしていく事の絶望感の現れでもある。誰しもが平等を求めみんな同じでまとめようとするしそれが一番だけどそうなった時の世界の虚無感とつまらなさをこの映画は描いている。実際に現実社会で生活してたら私達も「コイツは嫌だなあ。でもコイツは好きやなあ」ってついつい選り好みしちゃうけど実際にみんなが同じ個性で完璧になったら世界に色がなくなって全てが面白くなくなるのも事実で。
今の時代は映像作品にしろ現実の世界にしろ多様性が自分達の隣にある事が当たり前に叫ばれる時代。が、それを当たり前に受け入れれる人達がたくさんいるわけではない。「私も含めてそうですが」じゃあどうするべきなのか?答えは私達のすぐ目の前にある。理解し合わなくても良い、理解する事と許容する事は必ずしも一致はしない。しかしお互いがありのままで共に歩いていく事はできる。なんなら常に意見をぶつけ合っていても良いじゃないですか。当たり前の殻をぶち壊してこその多様性なのだから。
もう少し説明がほしかった所やこの題材と展開で肝心の子供達はどこまで楽しめただろうかと言う疑問などツッコミたい所が無いわけでは無いですがドラえもんと言うカテゴライズをぶち破りこれだけ攻めた内容で今の世界に必要な話を作ってみせたのは凄いと思いますし終盤の展開には涙も流せた。
みんなが各々の当たり前を押しつけ合わず互いにありのままで世界を築けていけたらそれが本当の理想郷なんだろうと思う。そんな映画。
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