sakura

そばかすのsakuraのレビュー・感想・評価

そばかす(2022年製作の映画)
4.7
めっっちゃくちゃかっこいい映画だった。

三浦透子さん演じる佳純も、あっちゃん演じる真帆も、まりっか演じる佳純の妹・睦美も、それぞれ方向性は異なるのだけど、それぞれにかっこよくて眩しかった。
ラストの三浦透子さんの歌と、エンドロールの最後の一瞬までかっこよかった。

わたしは母の娘であり、娘の母なので、セクシュアリティ云々以前に、ああいう風に親子であっても決定的に属性が異なることってあるよなあ、と思ったりもした。

L・G・Tを扱った映画は今までわりと観てきたと思うのだけど、Aロマンティック・Aセクシャルの登場人物に焦点があてられる作品は初めて観た。
話は逸れるけれど、年末年始に実家の父母(60代なりたて)とドラマの話になりわたしが『恋せぬふたり』が話題になってたから観たいと思ってるという旨の話をしたら、ふたりともAロマンティック・Aセクシャルという言葉や概念自体聞いたことないみたいなピンときていない様子で、本人たちの考え方に関わらずこれが今の日本のリアルなんだろうな、と思ったことを思い出した。
言葉・概念すら知らないということは、そういう人がいる可能性を考えること自体が不可能なわけで、わたしにとってみるとそれはとても恐ろしいことだ。父と母も、冒頭の飲み会や中盤のキャンプで出てくるような、「好きな異性のタイプ/仕草」は「基本的な会話のひとつ」だと思っているかもしれない。

「多様性」という言葉を聞いたことがないひとはおそらくもういないであろう昨今だけれど、「多様性 = 同性が好きな人や、性自認と身体性が異なる人、恋愛感情や性的欲求を抱かないひとも、この世にはいる」と思ってる人、たぶん結構いる。その代表があっちゃん演じる・真帆の父。
本来、多様性って「わたしとあなたは違うし、みんなが一人ひとりちがう」というだけのことだと思うのだけれど。

そして、あっちゃんはこういう役ほんっっっとうによい!わたしは95年生まれなので中学がAKB黄金時代だったのだけど、当時は全然推してなかったあっちゃん、いや俳優・前田敦子がほんっとに好き。
『くれなずめ』も、映画自体は全然好きじゃないけど、あのあっちゃんは最高。
本作ではあの「あんたなんか…あんたなんか…」のあとに、たいした暴言が出てこないあたりも最っ高にいい。わたしはああいうの中途半端で恥ずかし〜って思っちゃうけど、本当はかっこいいこと言えなくたってあのくらい感情的に生きていきたい。

途中、何度か“あ…こうなったら嫌かも…”と思うところがあったのだけど、見事にすべてそうならなくてよかった。
真帆が佳純に対してフラットに理解を示すも真帆自身は「一般的」な人生を選ぶところ、すごく劇的じゃないかんじがすごくよかった。
あと、朝ごはんの食卓で家族4人が談笑するシーンで終わったらどうしようと思ったけど、そのあと北村匠海のシーンがあったのもよかった。喫茶店で無言でパンフ読むのすごいいい。アニャ・テイラー=ジョイの、彼とのエピソードコメントを思い出す🥲(わたしもああいう人と一緒になりたい)

あと、元の夫が鬱だったので、鬱になられるのが娘が生まれた2ヶ月後じゃなければ、あのくらい生活の心配がないタイミングで、あのくらい家族としてできあがった時期だったら、あのくらいいい意味で軽く扱ってあげられたのかな、と謎の罪悪感に駆られた。
まあ離婚してよかったと思ってる(離婚祝いの乾杯を友人たちと何度交わしたかわからないほど)し、わたしが悪いわけじゃないので後悔もまったくないけど、この罪の意識みたいなのはたぶん一生つきまとうのね

それはそうと、まりっかの夫が完全に勢いで喰らうビンタのシーン最高によくて思わず笑ってしまったよね😂
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