ロアー

史上最高のカンパイ!〜戦地にビールを届けた男〜のロアーのレビュー・感想・評価

3.7
「グリーン・ブック」のピーター・ファレリー監督による実話もの。実話ものってびっくりするような話が多いけど、今作のベースとなったお話もかなりぶっ飛んでました。

軽いノリでのこのこ戦場に行ってしまったちょっと頭が残念な男・チッキー。これだけだと完全にコメディだけど、志願した訳でも徴兵された訳でもなんでもない《ごくごく普通のアメリカ人青年が見たベトナム戦争の姿》と言う、ある意味とんでもなく貴重な体験を描いた作品になっていました。戦争の英雄を讃える映画や悲劇を描いた映画とは一線を画したテーマで考えさせられることも多かったです。

お調子者でどうしようもないチッキーの頭の中では、

「サプラ〜イズ〜!ビール持ってきたぜ〜!」
「嘘だろ、お前なんでここにいるんだよ!」
「びっくりしただろ?なあビール飲もうぜ〜!」
「「カンパ〜イ!イェ〜!!!」」

と言う軽いノリが本気で展開していたんだろうな。チッキーが友だち思いで心から優しい奴だって言うのはものすごくよく分かるんだけどさ。

実際にビールを届けた友人たちの反応。
戦場の現状。
報道の嘘。
死。

現地で体験した様々な出来事から、戦争に対する気持ちが変わっていくチッキーの戸惑いをザックがうまく演じていて、後半は表情も目の輝きも別人のようで、あのおちゃらけた口ひげすらすっかり気にならなくなるほどでした。

いち日本人からすると、ベトナム戦争以前の戦争を"一般的なアメリカ人青年"であるチッキーが「世界を救うために戦った戦争」と表現していたのもなかなか印象的でした。
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