ロアー

MINAMATAーミナマターのロアーのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
3.9
泣くと言うか(いやまあ泣いたんだけど)、ずっと眉間に力が入った厳しい顔で、いろいろな感情を堪えながら観てしまう映画だった。

水俣病については授業でサラッと習った程度の記憶しかなくて、多分みんなそんな程度だと思うけど、今も決して風化させてはいけない重大な問題だと、エンドロールの世界中の公害被害の写真を観て尚更強く思った。

公害被害って結局、目を背けることから被害が大きく広がってしまうのかも知れない。不都合から目を逸らし、利益を優先し、人の命ですら些細なこととして切り捨てられてしまう怖さ。知らないだけで今もきっとそういうことがどこかで起きているんだと思う。その影響を一番に受けてしまうのが、発育途中の何も知らない子どもたちだと言うことも辛い。
なかったことにされかけていた真実をしっかり写し撮ってみんなの目を開かせ、心に焼きつけたのがユージーンの撮ったあの写真だったんだろうな。
写真を眺めるビルナイおじいちゃんを観ていたら、これは演技じゃなくても思わず泣いてしまうと思った。

写真だけじゃなく映画自体もしっとりと美しくて、心情に寄り添うように揺れるカメラやフォーカスも印象的な映画だった。すごく力強くて美しい映画。

日本の問題を外国人の視点で描いている点も新鮮。公害問題とユージーンのカメラマンとして生きる苦悩が重なって描かれていて、燃え尽き掛けてるロウソクが最後に一際強く燃える静かな熱さのようなものを感じた。ユージーンがお酒の問題を抱えているところはジョニデ自身にも重なるところがあって、昔からのファンとしては辛い気持ちもあるものの、それが演技の深みに繋がっていると思うのでホントこれからも頑張って欲しい。

日本勢もすごく良くて、真田さんの意思の強さがみなぎっている役も素敵だった。会議室での圧がかっこいい。

國村隼も汚染企業のトップとして悪人には違いないものの、ただの冷酷な悪人じゃなくちゃんと血の通った人間としての感情が伝わってきて、國村さんのすごさを改めて感じた。

とにかく好きな人ばっかり出ている映画で、みんなすごく良かった。すごく良かったよ!(語彙力どこいった)

あと、語彙力飛んでったついでに聞きたいんだけど、掛けてる眼鏡がみんなそれぞれオシャレで、アレ一体は何がどうしてそうなったの?メガネ好きとして問いたい。
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