がんさ

Blind Mindのがんさのネタバレレビュー・内容・結末

Blind Mind(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

※本作はスコアをつけないことにしました。

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「矢野友里恵監督の初監督作品」

目の見えない整体師の男と、容姿にコンプレックスを持っていた過去のある人気ファッションデザイナーの女、2人の恋愛を通して、「見る」とは何かを描いている。

キービジュアルにもなっている、男の静謐なまなざしが印象的だった。その目が切り取られていることが意義深いと思った。

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正直なところ、気になる点はたくさんあった。

男は盲目だからこそ、もっと日頃慣れていそうに思える動作までぎこちなく、違和感を覚えてしまった。とっさに足を出されたら反対に避けてしまうのではないかな…

そして登場人物たちは、そのセリフを言うためだけに必要な性格が与えられているかのようであまり好きにはなれなかった…

場面展開も、ここで切り替わってしまうの?その後どうなったのだろう…と?を引き摺るシーンが多かった。そして次のシーンはと思っていたところでエンディングがきた。

何を見せられたのかと、整理がつかないまま、目の前では次の舞台が整えられていく。

実はこの日上映後にトークセッションが組まれていた。私は発券した時アナウンスされ、偶然この場に立ち会うこととなったのだが、もはや運が良いのか悪いのか、この時点でよく分からなくなっていた…

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「映画作りについて」

監督、脚本家、そして監督の師匠筋の方がゲストで来られて、

作品評をしつつ、彼女(矢野監督)の歩みや、自身(お師匠さん)の映画作りについて語られていた。

改めて思わされたのは、映画は人の手で作られているのだということ。

考慮すべき要素は多岐にわたっており、産みの苦しみは想像を絶する…以前に別の映画監督のインタビューで、おれは(ひとの)映画を批判しない。完成させるだけですごいことだから、と言っていたのを思い出した。

またお師匠さんが仰っていたのが、「何を伝えたい」まで行けない人が多いのだとか…矢野監督が2013年に映画を学び始め、10年の歳月を経て、現在30分の本作を世に出したところなのかと思うと、映画作りとは何て根気のいる道なのだろうか。

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そして話は映画監督としての心得についての質問へ…お師匠さんが応えられていたのは、

自分が映画を作るのはそれが存在価値だから。18の時にやると決めたことを続けているだけ。いつか求められなくなる日まで丁寧にやり続けるのだと。

また遊びのように捉えているから疲れない。やりたいことだから勉強もできる。辛くなったらおしまいだと…

純粋だ、尊いなと思った。全てを映画に捧げて、ようやく一握りの人間が、映像の言語を操るようになっていくのか…

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映画の作られる過程に、ここまで具体的に気持ちを向けることができたのは初めてのことだった。

そしてもしかすると、この日この時は、何かの瞬間に立ち会っていたことになるかもしれない…矢野監督の次作も観たいと思う。
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