深獣九

LOUDの深獣九のレビュー・感想・評価

LOUD(2022年製作の映画)
4.0
なにこの狂った映画。凄いとしか言いようがないよこれ。

タイトルの意味は[うるさい]
文字通り劇中に流れる赤ん坊の泣き声と母親の叫び、アイドルの歌、悲鳴、すべてが大音量で耳に突き刺さる。本当にうるさい。

さらに、それ以上に舞台を支配する狂った空気が脳に突き刺さってくる。だってしょっぱなから部屋で立ち出産だよ。ベッドに赤ん坊ボットンだよ。

そんなだから赤ん坊は当然ピンチなんだけど、赤ん坊に「する」か「しない」かの緊張感もたまらない。胃をずっと掴まれてる感覚。
まあ結局するし。すんごいするし。ブッスブスやるし。

粒子が粗くてフリンジだらけで乱れまくる画面も不安を掻き立てる立てる。
ラストもぐっちゃぐちゃだし、というか徹底的にぐちゃぐちゃだ。
これ、耐性ない人が観たら、数日間まともに生活できないのでは? LSDキメたらこういう映像見られるよね。知らんけど。

あー包丁で肋骨をくじる音がたまらない。

実はこちら、阿佐ヶ谷ロフトAで開催されたイベントを配信で観たもの。上映のあとは監督のトークショーがあった。
監督はフレンチホラーファンとのこと。あーなるほどと納得。本作にも『屋敷女』や『ハイテンション』のオマージュが感じられるし、ラストはPOVの手法が取り入れられているし家は燃えるし、ホラーに対するLOVEがブッチュブチュ迸ってた。
監督によれば、実際『屋敷女』を撮りたかったからこうなったとのこと。ホラー映画の美しさやカッコよさ、陰惨な感じを出したくてコミカル要素は排除したそうだ。うん、スタイリッシュな映像美は本家に負けてない。カッコいい。
さらに監督は「本作は今撮りたいものを撮っただけなので、次はどうなるかわからない」だって。ほれてまうやろー。

いまあらためて2回目を観てるのだが、カット割りがすごい好みだ。安定感がありながら鋭く攻めてくる。私とーしろだけどそう思う。だって観てるうちに気持ちよくなってくるんだもの。

あーこれ劇場で観たいわ。爆音極音上映で観たい。会場はかなりの音量だったらしいので、行けなかったことが本当に悔やまれる。ぜひ大劇場で上映してほしい。文芸坐さんシネマートさんいかがですか?
深獣九

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