Jun潤

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのJun潤のレビュー・感想・評価

3.7
2023.01.14

予告を見て気になった作品。
数々の名作を世に送り出していた映画プロデューサーの性的暴行事件を暴いた記者達の奮闘を描く物語。
なんだか日本の芸能界も叩けばボロボロと埃が出てきそうなイメージですし、色んな業界にも当てはまりそうな話かもしれないので、面白い観方ができそうですね。

2016年、ニューヨーク・タイムズ紙はハリウッドに蔓延る性暴力事件の記事公表に動き出す。
チーム内の記者、ジョディ・カンターと、かつてトランプ氏関係の性暴力事件で無力を思い知ったが職場復帰を果たしたミーガン・トゥーイーは、機密契約とトラウマによって口を閉ざす被害女性たちに取材を行い、真実を暴くべく奮闘する。

うっっわ、ひっでぇなこりゃ(作品ではなく)。
同じ男として、人間としてこれは許せない。
世の中には想像し難い、一般の範疇では理解できない、したくもない汚くて卑怯な行いが繰り返されているのかと、今作では映画業界ということもあり、基本作り手の人間性には興味がない僕でも吐き気を催すほどの邪悪さが描かれていました。

今作でジョディらが立ち向かったものは「金」と「権力」で、それを阻んだのは女性たちの「沈黙」と「孤独」だったのかなと思います。
権力と性欲に溺れ、金に物を言わせて「沈黙」という厚く高い壁で被害者たちを覆う。
自分だけ、自分さえ口を噤めばと誰にも話すことができず、反省せずに犯行を繰り返す男の思うがままに「孤独」へと堕ちていく女性たち。
それらを打ち破るには、決して1人ではないこと、誰かが立ち上がれば、他の誰かも立ち上がって団結できるかもしれないということ。

作品としては個人的にエンタメ性が欠けていた印象。
事実を掘り下げ、犯人がわかっている事件に対してその証言を拾い集めていく過程の中では、現実に起きたからこそ色んな人が関わってくるし、それによって登場人物の咀嚼が必要になってきました。
しかし現実で起きたことだからこそ、このまま閉口してはいけない、純粋にジョディら登場人物たちに感情移入できる仕上がりになっていたと思います。
Jun潤

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