JONEY

スピリッツ・オブ・ジ・エアのJONEYのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

荒野の粗末な一軒家に2人きりで暮らす足の不自由な兄、気難しい妹。
ある日、2人の家の近くで行き倒れたスミスと名乗る謎の逃亡者を保護した事をきっかけに、2人の生活が変わり始める。

というざっくりあらすじ。


内容といえば謎の逃亡者が来て、彼と兄の2人が飛行機を作ってこの土地から逃れようとするも実験は毎日失敗し、妹は父親の墓守をする事に固執していて、自分たちをこの地から離そうとするスミスは悪魔に違いないと毎日「出ていけ」と大騒ぎする。
それだけで話が進んでいく。

分かりやすいストーリーで単調かと思いきや、話が進んでいくと、ヒステリックで保守的で狂人めいて見えている妹が、本来はただ「父の墓を守っていきたい」気持ちと、父親の説いていた”キリスト教”と言うものを信奉しているだけの常識人に、逆にエキセントリックな妹を保護して生きている常識的な人間に見ていた兄が『空を飛ぶ』と言う夢に取り憑かれ、一歩間違えば怪我どころか命も危ないその夢に自分だけでは飽き足らず他人をも巻き込むヤベー人間に見えてくるところが実に巧み。
そして、兄妹が暮らす荒野ギラリとした色調でありながらも荒涼とした様、散りばめられた宗教的なモチーフ、庭先で妹が奏でる謎の楽器の謎の旋律が更に心をザワザワさせられてしまう。

最終的に飛行機はなんとか完成するも、いざ出発の段階になって、あんなに焦がれていた『空を飛ぶ(この地を離れる)』と言う夢をスミスに託し、兄は妹はこの地に残る事を選択。そしてスミスはその飛行機を駆り、北へ向かって旅立って行く…~FIN~…と言う感じで、全体的には『爽やかだけれど物悲しい夢の終わり』といった雰囲気に受け取れたし、スミスと言う”謎の人物”は兄妹にとってメシア(キリスト)に等しい存在であり、彼に『夢』以外の物も託し背負わせて旅立たせたのかもしれないなぁなどと思うと、その行為には祈りや信仰、救済なんかも乗っかってくるのかしらと思ったわけですけど、これはもう(※あくまで個人の感想です)にしかならず、見るヒトによっても解釈が違うし、誰にフォーカスして見るかによっても感想が変わってくるだろうな。

もちゃもちゃと色々言ったけれど、端的に言うなら「なんかすごいもんを見たなぁ…」の気持ち。
これだけミニマムな世界と最小限の人物だけで、角度によって様々な印象になるはちゃめちゃにすごいストーリー、そしてどのシーンを見てもバチバチにキマった構図と色彩の舞台。圧巻。
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