2021/2/7
『王国』金井勝
めっぽう観念的だが、物語としては実は一貫している。時間に閉じ込められた男が、学び工夫し、クロノスから時間をスリ抜く話。ただその論理が大胆(乱暴)すぎるだけなのです。何故カルガモのアヌスがガラパゴス島に繋がっているのか。何故アヌスが時間と直結するのか(体内時計?)。それはもう金井ワールドとしか言えないし、この腕ずくのストーリーテリングにこそ感動するのだった。アザラシやイグアナが登場するパートカラーのガラパゴス島ロケシーンにも驚く。エンディングでは本作の主人公・五九(60進法における59を意味する)と、『無人列島』の日出国、『GOOD-BYE』の金井監督、それぞれの顔が暗闇に浮かび、そこへ地球が飛来する。戦後日本の寓話『無人列島』、血を逆流する『GOOD-BYE』、そしてクロノスと闘った『王国』で“微笑う銀河系”三部作は見事に完結。ホントに素晴らしかったです(ベストはもちろん『GOOD-BYE』)。アルトマン『バード・シット』を想起させる鳥博士を演じた大和屋竺の熱演も忘れがたいが、金井監督は今回も自ら火だるまになり身体を張っていた。