りょう

とべない風船のりょうのレビュー・感想・評価

とべない風船(2022年製作の映画)
3.4
 漁業以外には何の産業もないような離島が舞台で、初夏の季節の清々しい雰囲気が好印象でした。病院もない生活環境ですが、穏やかな瀬戸内海をわたるフェリーで本土との往来もそれほど不便でもなさそうです。
 ゆったりした時間の経過と少ない情報量で、のんびり眺めるように観られる作品ですが、登場人物の背景や心情などもわかりやすく描かれています。
 若くして妻子を亡くした漁師と精神を患って父親のもとに一時避難してきた元教師の女性との交流は、2人の俳優さんの抑制された演技とも相まって、自然に共感できる物語に仕上がっていました。
 凛子が病で亡くなった母の日記に涙したり、生徒が6人しかいない小学校の臨時講師で職場復帰したり…なんていう、ありがちな展開に流されないところもよかったです。登場人物の言動が必ずしも的確でなかったりするところも…。
 映画には何かと特別なことを期待しがちですが、まったく仕掛けのない設定や小難しい解釈を必要としない作品は、身近な邦画ならではのニーズとしてあると思います。
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