reina

Pearl パールのreinaのレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
4.0
私の人生かと思った。

有害な親、何もない田舎、閉ざされた環境から抜け出して世界のスターになるの。

憧れの映画スターの世界の一部を小さな部屋へ持ち帰って何度も何度も繰り返し見つめて憧れる。外の世界へのアクセス方法は限られている。また、そういった世界の存在も知ることもなく小さな世界で人生を終える人々も多くいる。

この鬱屈とした場所から抜け出すためならなんでもする。この家、この街、この地から出るため血の滲むような努力で大学受験をして都会へ出るチャンスを掴む。(第一志望には落ちた)18年間どれほどこの時を待ち焦がれただろうか。やっと外の世界へ出られる。

都市部の人々が地方へ数日間の旅行へ行き「田舎って素敵だわ」「自然って癒される」などとぬかす。普段、都市部で世界の上澄みだけを啜り生きておきながら、都合のいい時だけ地方(の好ましい部分だけ)を利用する。烏滸がましい。選択して地方に行くことと地方に生まれることには雲泥の差がある。この地獄を知る気もないくせに。

しかし、かく言う私も都会に侵食されつつあるのだ。葛飾区へ行って「静かなところね」と言う自分に驚く。かつての苦労や苦しみはまるで過去にあったほくろのようにそもそもの存在自体の記憶が消え去っていく。過去の苦しみを携えて生きていくよりも忘れ去るほうが健康的なのかもしれない。順応していくプロセス。

ある意味で私はスターになることに成功したのだ。これはさまざまな運がたまたま私に味方をし、人を殺す以外の全てのたゆまぬ努力を重ねた結果である。見限って犠牲も払った。

歪な笑顔を浮かべ続けて何もかもを隠す。
reina

reina