WillowMarrais

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいのWillowMarraisのレビュー・感想・評価

4.6
人間に根源的に備わってるものがあるとすれば、それは可塑性すなわち暴力性なのだろう。
何かを良くも悪くも変えてしてまう力。
それは否応なく我々を襲う。あなたを奪う。
この言葉ひとつでさえ、暴力になる。



このぬいぐるみサークルでの物語は
自らの暴力性をいかにして最小限にできるのか、事態が変わろうとする時自分はどうしてやれるのか。人にどう優しくできるのか。
声を往還し続けることの意味はどこにあるのか。
その不可能性を前提とした可能性を模索する。

それは同時に内に籠ること=切断ではなく断絶に近いものとして無関心さを呈する。
白城のようなツッコミ役(コミット側)がいるから、この映画は純然たるユートピアではない。
現実問題として扱うなら当たり前の配置だけど、それが余計に「ぬいサー」の辛さや特異さを炙り出している。
もはや彼らにマッチョなエネルギーはなく、情熱や感情を疑うところにまで退隠している。これは重大な変化。



前作『眠る虫』に通底するアニミズムやモノへ向けられる思考などは顕在しながら
商業映画ということで、かなりPopな装いと人物描写。
しかし、物凄くハードコアで現代的な問題を、それはZ世代的(?)な実存のもつ数々の指向性を含んだ、必要とされる作品だと思う。
少なくとも自分はそう思ったな。



わがつまが流れてびっくり。
ここ繋がるの必然やろなあ。
京都映画です。
出町座近くの謎の草たち出てきた。



追記
『眠る虫』でも出てきた石というモチーフ。
それは今回ようやくヴィトゲンシュタイン的な何かだと確信する。
それは転じてデリダがいうような定義することを拒むもの。
WillowMarrais

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