ももこ

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいのももこのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

「大丈夫じゃない」ことはこの世にありふれすぎている
ひとつひとつを真摯に受け止めていたら心が壊れてしまう
だからどうにかこうにかやり過ごす必要があって
方法は人それぞれだけれど、そのほとんどが
脳みその中で悶々と考えを巡らすというより
声に出したり言葉を連ねることで気持ちを整理する、
つまりはアウトプットするものに帰結すると思う

「話す」という行為自体は同じでも、その対象が
人間かぬいぐるみかでは本質的に違う。
人間に話す場合に、その相手を悪意や他意なく傷つけてしまう
可能性があるということまで考えてしまうような
繊細で優しいひとが、そう心配する必要のない
無機質な存在=ぬいぐるみにしゃべりかける

もちろんそれなりの愛着や安心感があるのは間違いないが、
彼らにとってぬいぐるみはアウトプットの対象に過ぎない?ので
それらに命があると信じる(願う)人ともまた少し違うのかなと思った
両方を備えている人は多分タルパのように考えている気がする

でも、人間だろうとぬいぐるみだろうと何だろうと
自分以外の何かに頼ったり縋ることをみんな必要としている
だって、人はひとりで生きているわけじゃないから

そして「人間との対話」は自分を、相手を知る第一歩
価値観や考え方捉え方が違って当たり前なのだから
知ろうとする、分かり合おうとするその姿勢が何よりも大切
そのことに彼らが気づけたのであればうれしい

何に対しても優しいに越したことはないが、
優しすぎることは必ずしも良いとは言えない

優しさと愛情と強さと弱さと無関心と諦め、
諸々が複雑に絡み合う
ひとことで表すのは難しいけれど
ただまっすぐこちらを見てほほえむ白城のような人が
いちばん適切な「優しさ」を持っているんじゃないかな
最後のセリフにグッときました
ももこ

ももこ