ShuheiTakahashi

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいのShuheiTakahashiのレビュー・感想・評価

3.9
傍から見たら一見病んでるように見える。
けどそんな言葉で簡単にしたくはない。

社会のズレ、常識に対する違和感に気づいてしまったら、もう今までのようには生きてはいけない。
その苦しみ、寂しさ、虚しさ、無力感、どう向き合っていくのか。
逃げるのもいいし、闘うのもいいし、流されるのもいいかもしれない。
でも、話す。
まずは、話してみる。

理解と差別は似ている。
わかるよ、とは簡単には言えない。
だって私とあなたは何もかもが違うから。
でも、でも、その感情を殺してはいけないと思う。
殺させてはいけないと思う。
社会や常識に圧し潰されないように、向き合っていきたい。

主人公の七くんの優しさは正直好きではなかった。
最終的な決断というか、選択は良かったけれど、途中、被害者になっていた七くんは嫌だったな。
それすらも受容される優しい世界も必要なんだろうけど。
麦戸ちゃんや白城さんの優しさの方が好きだったな。

私は男として生まれ、男として生きています。
だから女性が生きる中で、この社会に当たり前のように存在する苦しさや差別、加害や被害を本当の意味でわかることはない。
一人一人、苦しみは違うけれど、女性には女性というだけで、最初から存在する苦しみが在る。
だから、わからないけれど、社会がおかしいこと、間違っていることはわかる。
だから、目の前で、もしそういった言動
を見たり聞いたりした時は声を上げたい。
闘いたい。
でもそれによって被害を受けている側がより苦しくなるかもしれない。
独りよがりの偽善にまみれた正義感かもしれない。
でもそれでもいい。
誰のためでもなく、自分のためにやる。
こんな社会では生きたくないのだ。
その性差別をする人にだけ、面と向かって話すのがいいのかもしれない。
正解はわからない。
だから考え続ける。
違和感を無視せずに、向き合っていく。

身体的性も性自認も男の人が、男も女も関係ないよ、差別しないよ、と言うのには、まだ違和感が在る。

社会の在り方を変えてからの話だ。
今変わりつつある社会に対して、息苦さや窮屈と感じる人はそもそも今ある社会の前提がおかしいことに気づくべきだ。

また散々話し合うことの大切さを書いてきたが、自分の中だけに大切にするものもあったほうがいいと個人的には思う。

それまでは誰かの居場所になりたいし、目の前の人だけでも向き合って生きたい。
話すことで息をする。
息ができる。
生きやすくなる。


間のとり方、が大分強気だったな。
ShuheiTakahashi

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