どらどら

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいのどらどらのレビュー・感想・評価

4.8
原作小説がほんとうに大好き、というか読んだ時に自分がずっと感じていたモヤモヤや生きづらさみたいなものがそっくりそのまま言語化されていて、このことで悩んでいるのは自分だけではないんだと思えたし、多分実際にいたら苦手なタイプの白城ちゃんのやさしさにも気がつけて、やっと息できた感じがした。
だからこの小説の映画化はずっと楽しみだったし、この作品が届くべき人のところにしっかり届いて欲しいなぁと思っている。多分この作品を必要としている人は、僕が思っているよりもきっとずっと多いから。

そのうえで
原作の成人式のシーンはかなりカットされ、一番えぐみのあるシーンだけ残った感じ。「ゲイかよ」のシークエンスを丸ごとカットしてレズビアンの先輩の存在を強く押し出したところに作り手の強烈な意志を感じた。途中から周りの人のセリフを完全にシャットアウトしたのはあの表象で傷つく人がいる、その事実に向き合った結果のようにも思えて、作品のテーマを踏まえた勇気ある決断だと思った。

白城ちゃんの最後の独白、小説と同じで何回も読んでるからそっくり暗唱できるのに鳥肌がたった。白城ちゃんのやさしさになんか涙が出る。

絶対に分かり合えないこと、ちがうこと、この世界は傷つくもので溢れていること、優しさは伝わりにくいこと、生きることそのものの加害性、コミュニケーションがはらまざるをえない加害性、話すと楽になるけれど話された人はしんどくなるという事実、そしてそれでも話さなければいけないこと。

わたしたちはぜんぜん大丈夫じゃない。
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