菩薩

美と殺戮のすべての菩薩のレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
-
正直思ってたんとちゃう部分があったのも事実だがこれはこれで。個人や個別の事件の掘り下げもだが、同時にアーティストがいかにソーシャルイシューにコミットしていけるか/いくべきか、芸術にとっての独立性に対しての問いであったし、幼い頃は失語症間近ですらあった当人が当初こそ声を震わせながら頼りなげに拳をあげ、それがいつしか力強いものへの成長し最終的に絶対的な勝利をもぎ取っていったか、その過程は非常に興味深く観ることが出来た。かつてのエイズ危機からオピオイド危機に、他人の痛みを利用して金を儲ける企業/一族とその支援を受ける芸術空間との闘い。NYアンダーグラウンドらしい音がずっと鳴っているのも心地よい、VUにSUCIDE、LIZZY MERCIER DESCLOUX にBUSH TETRASなんかも。時代と共に彼女を取り巻く人々も立ち向かう相手も変われど、彼女自身の芯は変わらず、物事の本質を見極める目も変わらない。それが培われたのもその悲惨な家庭環境故の部分があるのだろうが、若くして自ら命を絶った姉の魂と共に彼女は声をあげ、社会の闇(病み)を見つめる。
菩薩

菩薩