タツキ

美と殺戮のすべてのタツキのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
4.5
結構待たされてたけど、いつの間に邦題と公開決まってて、危うく見逃すとこだった。

ナン・ゴールディンの人生(姉の自殺、アンダーグラウンドカルチャーとの接続、性的マイノリティのコミュニティでの生活、恋愛遍歴等)と、現代の彼女が鎮痛剤オキシコンチンの有害性のサックラー家への責任追及に乗り出すパートが並列に映される。ナンという人について、自分の知識不足もあり、やはり前者の伝記要素が大変興味深かったが(ジョン・ウォーターズを介してのクッキー・ミューラーとの交流は、この間のリトル・リチャードのドキュメンタリーも含め、ウォーターズの作品がいかに、当時の性的マイノリティ、或いはアウトサイダーたちとカルチャー、共通項をもつ他者を繋ぐ先鋭的な存在だったかについて、考えさせられる)、この映画が意図的に生み出すナラティブが魅力的だと思った。

タイトルの回収が深い意味を持つ。人々の生々しい快楽と生活を映してきた彼女のカメラが、写せなかったものを考え、泣けた。
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