タツキ

異人たちのタツキのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.5
ボロ泣きした。自分はクィア非当事者ではあるのだけれど、この孤独と不安は間違いなく見覚えがあったし、多くの人が人間関係において内包しているものでもあると思う。様々な意味で越境性を感じる。

アンドリュー・ヘイの最高傑作だとは思うのだけれど(『荒野にて』も久々に見返すとよりグッと来るかもしれないが)、弱点もあるとは思う。クライマックスの両親との別れのシーンは、大林版のすき焼き屋と夕日には及ばない。あのファミレスを印象的な場所として撮らないのも、大林版と異なり、作中の光をネオンや街灯に託していたのに、そこにきて夕日をわざわざ持ち出すのも、焦点が曖昧なシークエンスであると思う。

一方でポール・メスカルとの、つまりマンションの住人とのエピソードは本作が1番に思える。本作に映える数々の反射は、主人公の越境を示している。ラストで彼らは星になるわけで、原作や大林版と、全く違う解釈の余地をラストに残している。

確かにまさかのフランキー・ゴース・トゥ・ハリウッド映画ではあったが、『アフター・サン』と同じくブラー×ポール・メスカル映画でもあった。
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