ジジイ

美と殺戮のすべてのジジイのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
4.1
写真家ナンゴールディンの生い立ちとその創作の歴史を辿りながら、同時に自身も死にかけたという鎮痛薬オキシコンチンの中毒性の告発と(それによって莫大な利益を得た)サックラー家糾弾活動を追うドキュメンタリー。巨大資本と、美術館に多額の寄付をする大富豪を相手に写真家としての強みを最大限に活かしながら、少人数の仲間と共に戦いを挑んでいく姿に胸が熱くなった。また両親と姉の関係が彼女の人生に大きな陰を落としていることも興味深かった。最初の写真集「性的依存のバラッド」に登場する恋人との確執や、エイズに倒れていった友人たちとの交流が明かされるなど、撮影当時の彼女のコアな部分の感情に触れることで作品に対しての見方が全く変わってしまった。「現実をあるがままに伝えようとする」彼女の真摯なまなざしが作品に力を与え、さらに芸術と社会をも揺り動かしていくさまに深い感動を覚えた。
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