よどるふ

バートン・フィンクのよどるふのレビュー・感想・評価

バートン・フィンク(1991年製作の映画)
-
ホテルの一室というプライベートな空間であっても、隣の部屋から漏れ聴こえてくる声や物音が、否応なく“世界”との繋がりを自覚させられる。そういう意味で、デビュー作の『ブラッド・シンプル』との繋がりを感じたのは、再鑑賞しての収穫。

『ミラーズ・クロッシング』で子悪党を演じたジョン・タトゥーロが、本作では新進気鋭の劇作家を演じている。舞台袖で劇を鑑賞する登場時のポーズが良い。また、コーエン監督がロジャー・ディーキンス撮影監督と初タッグを組んだ作品でもある。空間の奥行きの画作りが印象的。

むかし観た記憶では、もう少し幻想色が強かった気がしたのだけれど、この作品全体の描写のバランスが“映画を観た記憶”を良い感じに発酵させる効果があるのかもしれない。時が経ち、細部を忘れることで完成する映画体験。
よどるふ

よどるふ