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バートン・フィンクのbombsquadsのネタバレレビュー・内容・結末

バートン・フィンク(1991年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

20220804 自分用忘備録
コーエン映画は神なき世界で、ここに地獄がある、いま地獄にいると訴えてくる。
救済も約束もなく谷間を彷徨うバートン・フィンクは、カフカ的な「城」ことハリウッド世界に迷い込む。ルール不明の異界で手探りしながら、彼の前で徐々に人々の荒廃ぶりが明らかになっていく。この映画は結局、彷徨う人が彷徨う人々と巡り会っていく物語だと明らかになる。ゲーテ「神曲」の地獄篇とはかようなものか。
ただ1人、隣室の自称セールスマンは「俺の家を地獄と呼ぶのか」と言い「精神の力」を謳う。連続殺人鬼は、この世界で地に足を付けている唯一の存在、地獄の真の住人だ。人を殺すことで自ら我が家を地獄にしておきながら、バートンの誹りを許さず、自在に業火を操ってみせ、秩序の介入を許さない。
その力を目の当たりにしたとき、バートンには物語が舞い降りるが、途端に世界のルールがカミュ的に変転してしまう。水兵に殴られ、社長にシジフォス刑を言い渡されて、この世界を去る手段を失ったバートンは海辺を歩いて部屋の絵画の世界に入っていく。なりおおせたかに思えた異邦人であることを止めて、自ら望んで地獄を右往左往する人々の中の1人であろうとしているかのようだ。
バートン・フィンクは、いまもハリウッドを彷徨っている。そこはここと同じ神なき世界で、ここと同じく地獄であって、いま私たちは地獄にいるのだ。そういえば蚊もいっぱい飛んでいる。
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