もじぱん

バルド、偽りの記録と一握りの真実のもじぱんのレビュー・感想・評価

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正直イニャリトゥが心配になる作品だった。この作品を彼の自己満足とする意見もよく見るが、確かにそれは否定できない。
イニャリトゥの極めて個人的な人生観の話なのだが、だからといって普遍的なテーマが生まれないわけではない。1人のアーティストの孤独と苦難からは多くの魅力的なテーマが生まれ得るだろう。
だけどこの作品がそうではないのは、自己憐憫が強すぎるからであり、そしてどこかスカしたイケすかない雰囲気があるからだろう。スカしてるというのは取り繕っているということで、これだけ内面を顕にしたような作品でありながら、彼はまだどこか取り繕っているように見える。不幸な自分に浸っているように見える。これはこの作品の明確に批判されるべきところだと思う。
81/2は未見だが、この作品とどんな違いがあるのか一度観てみたい。おしゃれぶったスカしたおっさんの独白だろ?と思うのか、そこにより深くて普遍的な思想を観るのか。
イニャリトゥにとってこの作品はもしかしたら何かの解脱を果たすための必要なプロセスだったのかもしれない。誰にでもそうやって内部に溜まった灰汁を取り除かなければならない時はある。それをこのスケールでやれるのだから、名監督というのは凄まじい。
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