荒野の狼

バルド、偽りの記録と一握りの真実の荒野の狼のレビュー・感想・評価

2.7
例によってよくわからんサブタイトル。「偽りの記録と一握りの真実」だそうである。別にそう大上段に構えなくとも「ウソから出たマコト」くらいの表現にしておけば可愛いものを(まあ和訳だけどね)、そんなふうに、小利口な翻訳にされちゃうあざとさ具沢山の映画である。そういう気を衒ったそれなりの魅力は、ないではない、つまり全部ネタみたいなところはまさに寺山修司に近い。哲学とか芸術とかじゃなく哲学的雰囲気、芸術的雰囲気が好きなのだ。だから、これでもって半生を綴るとか述べているようだが、半自叙伝と言うにはあまりに軽い。自分史を綴るならやはり文章であって、映像は不向きだろう。『フェイブルマンズ』が今ひとつなのも、そんな理由からである。見せると読ませるの違いがそこにある。監督は怒るかもしれないが、私から見ればこの映画、大衆が目を見張る映像展開と茶の間文芸を併せ持つ『トップガン•マーベリック』と大差ない。もちろん文学的〝感動”には程遠い。存在論的な深みも見当たらぬ。
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