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ボーンズ アンド オールのcrocodileのネタバレレビュー・内容・結末

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

【ストーリー】
2つの見方ができる。
1つは人喰いが存在する映画世界での恋愛物語という見方。
もう1つは、人喰いが現実世界における何らかの(法に従ったり他者に危害を加えることなく生きるのが困難な)少数者のメタファーとなっている物語という見方。

結論から言うとどちらの見方としても、メッセージ性が浅く感じた。

前者の見方で捉えると、起きた出来事といえば、人喰いの同族を見つけ、恋をする。再開した母親に、愛故に殺されかける。また、同族のストーカーに殺されかけるが、恋人が身を挺して守り、恋人に食べられると言う形で死を昇華する。というようなストーリーで、悪く言えばありきたり、良く言えば、人喰いが存在する世界で生まれた(現実世界の私たちから見れば特異だが、彼らにとっては極めて現実的な)恋愛物語、という単純な印象で、強いメッセージ性や表現の新しさは感じなかった。

後者の見方で見ると、人喰いが暗示している現実世界の対応者が以外とすぐには見当たらない。迫害されてきた性的マイノリティーや被迫害人種などと結びつける人が多いだろうが、それは拡大解釈であると言わざるを得ない。映画世界で人喰いは、確かに少数者として隠れて逃げ回りながら生きているが、他者を殺さなければ生きていけないという点が彼らの人生にとって一番大きな葛藤点であって、性的マイノリティーや被迫害人種はその要素を一般には持たないという点で異なる。したがって、この映画を敷衍してそれらの人びとと結びつけるのは行き過ぎていて、この映画における恋愛を、現実世界のマイノリティーの恋愛に重ねるのは強引。

【映像】
人を食べるシーンは、確かに非現実的ではあり、血の質感こそリアルなものの、そこまで過激な表現ではないと感じた。

80年代、90年代のレトロな雰囲気は程よく感じられた。

【引っかかった点】
以下、回収されなかった、あるいは意味する所が曖昧だと感じた描写

・マレンとリーが見た夢の中での描写。

マレンの夢の中→人喰いでは無かった父親の口から血が溢れ出すような描写

リーが見た夢の中→胸に付いた傷の描写、誰かを斧のようなもので攻撃する描写、リー自身に見下ろされるような描写

などがあった。それぞれ、マレンが父親に抱く憎しみの投影、将来起こることへの暗示、自身の正義との葛藤、などと解釈し得るが、それぞれ明確な示唆ではなく、描く絶対的な必要性がそこまで感じられなかった。

【まとめ】
個人的にはティモシーとテイラー2人の演技やその魅力が最も大きな見どころで、ストーリーや映像に圧倒されたり感動する点は無かった。
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