ゆうゆ

ボーンズ アンド オールのゆうゆのレビュー・感想・評価

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
4.0

寂びれた草原の海原にぽつんとふたり
ニコイチの彼らはまるで
乾いた緑に咲く小さな花のように
やさしい悲しみの色を帯びていた

指をくわえる あの恍惚とした刹那
抑えられない衝動と抗えない欲望への葛藤
ひとりで抱えるしかなかった不安を
あてもなく漂うしかできないやるせなさを、
誰とも分かち合えなかった孤独に震える
おなじ秘密の苦しみを知るものどうし
ふたりの嗅覚がお互いを導き惹かれあい
理解しあい 永遠にとけあっていく..
愛は血の味がした

リーの 体温なさげな儚げな薄さ、
マレンの無垢なあどけなさの中に
悲しい記憶を内包する彼をまるごと
受けいれる
子宮のように柔らかなやさしさと
あたたかな母性を感じた

執拗に纏わりついてきたサリーも
彼女のなかに そんな癒しを嗅ぎつけたん
じゃないのか、
彼の食後の血みどろ姿は真っ赤なスタイを
つけた幼児のようで
同じ種族の成れの果てのような
永く闇を彷徨う魂の抜け殻みたいな
あの薄気味悪い亡霊感のインパクトは
なかなかのやばさ

ふたりに張りつめる重たい空気を
包み込むようにふり注ぐ光のきらめき
空の淡いピンクのベール
嫌悪感よりもピュアな純愛に昇華された
血塗られたボーイミーツガール

彼らの達観した究極の愛は
切なくも愛おしい
ゆうゆ

ゆうゆ