ロロロ

ボーンズ アンド オールのロロロのネタバレレビュー・内容・結末

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

愛の一つのあり方としてのカニバリズムをとても美しく描いた映画だと思う。社会からの孤立感を抱く人々のメタファーとして苦しく胸を穿つ作品。

個人的にはサリーが愛を知らないイーターとしてリーと対比的に描かれていたのかな?と思ってる。サリーの好意は本当の愛ではなくて、それを知らなかったサリーは間違った愛し方をしてしまった。もちろん彼のは利己的な好意でマレンの気持ちを考えずに行動してしまったし、その好意は愛ではなかったのかもしれないけど、それを知らないくらい1人で孤独に生きて愛し愛されなかったということがとても悲しいなと思う。
マレンとリーはたまたま出会った同族と愛し合うことができて幸運だったのだと思う。ただ、限られたコミュニティで出会った人間としか愛し合うことができないという点で私たちは何ら変わりがなくて、結局その本質は同じなのかもしれない。

更に社会からの孤立について、どうやって生きればいいのかアメリカを旅しながら苦悩するロードムービー的要素が良かった。アメリカのような広大で自由な場所にも社会は必ず存在していて、私たちはそれに属して生きていかなくてはならないことを痛感した。

そして鑑賞者全員が思うであろうこと、ティモシーが美しすぎる。特に人を食べた後、口元にべったりと血をつけながら車を運転するシーンは神聖ささえ感じさせるほどの美。最初は絶対裏切るだろとか思ったくらい。そんな彼が孤独を抱えて苦しみもがきながら人を愛して生きようとしている。その生き様そのものが綺麗。
リーがマレンに父親殺しを告白するシーン、そこまで苦しい記憶を話す必要があるか?って思ったんだけど、パンフに「リーはマレンを外へ連れ出し、マレンはリーの内側に立ち入る」みたいなこと書いてあって納得した。マレンの孤独はリーが外に連れ出すことで癒されて、リーの孤独はマレンがリーの内側に入ることで癒されたんだね。

また、最終的に「普通の人みたいに定住して職を手に入れて暮らそう」となったところが少し引っかかった。それができないから悩んでいたのではないか?定住しつつ人を食べることはできるのか?という疑問が残る。
ストーリーのわかりやすさや進行優先で少し、ん?ってなったとこもあった。
でも概してとても美しい良い映画でした。

観る前ばちぼこビビりながらも一緒に観てくれた友達へ、ありがとう!
ロロロ

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