神が意図

ボーンズ アンド オールの神が意図のネタバレレビュー・内容・結末

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「人喰い」はいかにもなメタファーだが、そこに意味を求め過ぎると取り残される。もちろん、彼らを「人種やジェンダーなどによって社会的システムから疎外された人々」と読み解くのは容易い。しかし、作中においてその行為は「本能的衝動」「罪深い悪行」「セックスを超える愛情表現」と、さまざまな含意を持って描かれており、その意味合いは一貫していない。

主人公たちが旅の途中で出会った男や、終盤に牙を剥くサリーはかなり猟奇的に描かれている。しかし、仮に主人公たちを喰おうとしていたとして、同じく主人公自身も殺人・食人を行っているのだから、罪(とするならば)の大きさに大差はないはずである。なぜ彼らばかりが不気味で不条理な存在として描かれているのだろうか?

サリーは「同族喰いは禁忌だ」と語るが、これも彼自身の信条なのか、何か別の理由があるのかは最後まで明かされない。

映画を観ているとき、サリーに対しては「暴走するパパ活おじさん」としての恐怖感くらいしか抱いていなかったが、よく考えてみると実は物凄く悲しい人物なのかもしれない。

カニバリズムについては、遺伝的要素は明確に示されているものの、いわゆる「食人族」的な血縁関係は登場しない。「食人」を家族から継承されるつながりとして描きつつ、マイノリティであることに取ってつけたような理由を用意しない、そのバランス感覚のよさには極めて好感が持てる。

監督自身がインタビューで語っているとおり、この映画は何の皮肉もない作品として観た方が楽しめるような気がする。

人間は生きている以上、何かを犠牲にせざるを得ない。そして、その事実を無意識的にシャットアウトすることに慣れきってしまっている。いざ向き合ってみたときに見えてくるものは、罪悪感なのか真実の愛なのか。いずれにせよ、何の取り繕いもない剥き出しの感情なのではないだろうか。

アメリカ各地の無骨ともいえる景色は美しく、ビートニク文脈の作品として観るのもまたおもしろいと思った。
神が意図

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