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光復のeulogist2001のレビュー・感想・評価

光復(2021年製作の映画)
4.1
この作品は常識的な感覚で観てはいけない。善意の側にいるケイコさんと横山さんが周りにいる「ふつう」の人々から、これでもかというばかりに「蹂躙」されてしまう。目を背けたくなるようなシーンが何度も何度も放り込まれてくるが「同情や憐憫」を抱いている暇はない。それは作品の中にデフォルメされてはいるが、現実に起こった事なのだ。

二項対立的に安易に善悪で出来事を判断してはいけないのだ。あなたが観ているものはあなたが理解している世界であって現実の世界ではない。「空」として「無常」なものとして世界全体を捉えよう。

しかしこんな理解を超えて本作は社会的批評にも宗教的な解釈にも人間の業の物語にもハマらない。当たり前の想像力を軽く(重たく)踏み躙るところに存在している。

映画作品をはじめ芸術は本来、ありきたりな常識や想像を越えたところにあり、新しいなにかやどこかを見せてくれるもの。本作はそうしたところにある。

商業主義の枠を越えた日本映画というよりも映画そのもの、いや表現そのものの可能性を改めて示してくれる。「体験」するのはまさに今だ。
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