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ジョーカー:フォリ・ア・ドゥのmonochicaのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

前作JOKERから数年後、獄中にいるアーサー・フレック。世間はジョーカー事件の熱冷めやらぬ中、彼の裁判が開かれようとしていた。

正直一作目でやれることやりたいことをやった感は凄くって、続編が作られるって情報を聞いた時はいらんだろとしか思わなかった。
いざ見たら世間一般にウケの良い作品にはなってなくて、あくまでアーサー・フレックのお話で終止していた。
ウケ狙うならランボーみたいにJOKERが大暴れする話で良かったと思うけど、そんなことにはならなくてむしろ良かった。


この作品が低評価多いのは多分狙ったのかなと思う作りで、作中で誰も、アーサー・フレックのことなんて見ていなくて、看守はもとより、囚人もJOKER信者も弁護士も、リーも。そしてこの映画を見に来た観客も。誰もが痛快で影響力のあるJOKERを求めてる。誰もが、自分では何も為さないが、箍の外れた狂人が何か為出かさないかと期待している。

「何してんだよ。映画館のくらやみで、そうやって腰掛けて待ってたって何も始まらないよ。スクリーンの中は空っぽなんだ。」

誰も、悄気た痩せっぱちの、ただの中年男の泣き言を観たいなんてと思っていない。
だからみーーんな、つまんないって思うんじゃないかな。

「誰も、俺の名前なんか知らない。」

ミュージカルシーンは彼の空想であり、どれもこれもハッピーで楽天的。しかしそんな中でも、二人で歌いながらリーが僕のことを見ていないと拗ねるシーンがある。リーへの猜疑心を拭いきれないところが彼の中にあり、それをジョークでかわして空想を続けたのは、もはや痛ましい。


「ここに集まっている人たちも、あんたたちと同じように待ちくたびれている。
「何か面白いことはないか」ってさ。
そっちとこっちが違うのは、そっちは場内が禁煙になってるだろう?
だけどこっちは自由なんだよなぁ。
まぁ、映画館の暗闇のなかで格好よく堕落しようなんて思ってるんだったら、そんな、行儀よく座ってたって駄目だよ。」


現実逃避願望の強さのあまり、肉体を置いて精神が飛び出した夢見がちなアーサーだが、結局いつもの監房に元通り。しかし一度誕生してしまったJOKERという偶像は、彼の元を離れ数多の人々の心に棲みついた。
ラストで新たなJOKERの誕生を暗示するのは、やはりJOKERとは個人ではなく誰もがJOKERになり得るという前作との共通項なんじゃないか。アーサーを刺した囚人だが、彼のその後は、誰も知らない。役名も出ていない。


個人的には想像より良かった。
前作に比べればめちゃくちゃわかりやすくて、ひねりもない、なるべくしてなったという感じのお話。


後記
なんだか書いてて、この作品は寺山修司の「書を捨てよ街へ出よう」なのではないかと錯覚して戯れに間に挿入したが、なんか合ってるような気がするのでそのままにしておく。
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