ピースオブケイク

湯道のピースオブケイクのレビュー・感想・評価

湯道(2023年製作の映画)
4.4
この映画を観終わって徐に、東京の下町でフリーライターをしている銭湯好きの姉にラインした。これは銭湯好きには堪らない映画だと思う。姉はまだ観ていなかったようで、面白いから観て、の私のコメントにありがと、のスタンプをもらった。

よくもこれだけクセ強俳優ばかり集めたなー、と感心する。しかも、どの配役も見事、それぞれの持ち味を存分に発揮したハマリ役揃いだ。湯の道というのを初めて聞いたので、どこまでが真面目な話で、どこからがオチャラケなのかわからなかったけど、どっちであったとしても面白い。湯に浸かることの幸せ、そういう何気ない幸せを思う、そして自然に感謝する、大袈裟かもしれないが、これこそ人生の真理ではないかと思った。

吉田鋼太郎演じる怪しい温泉評論家が、源泉至上主義で銭湯の価値を認めない、沸かし湯と言ってバカにする。この人と井戸水を汲み上げて薪を焚いて沸かしている銭湯まるきんに通う常連客との対決シーンが見どころの一つ。湯の本質とは?、成分より大切なもの、心の洗濯、心を洗い人を無垢にして絆を深める。榎本明のセリフが心に響いた。

湯道の家元が湯のお点前を披露する場面が何度か出てくるが、この檜風呂とその背景の美しさがもう一つの見どころだと思う。真っ赤に輝く紅葉の美しさが湯面にも見事に映し出されていて、風呂に浸かることでこの湯面を壊したくない、と思ってしまうほど綺麗だった。こんなお風呂に浸かると気持ちいいだろうなぁ…。この美しい景色を背景に、角野卓造演じる家元が生徒たちに伝える湯道の心得が本質を突いている。また、絶妙に外す英語ダジャレが面白い🤣

あと、天童よしみとクリスハート親子のエコーの効いた風呂場での美しいメロディが、銭湯中に響き渡り聴き応え十分で贅沢!エンドロールのユーアーマイサンシャインもめっちゃ楽しかった😊

ちなみに姉の住む下町で長年愛されてきた銭湯が、応援の甲斐もなく惜しまれつつも閉店となったらしい。ライフスタイルが大きく変化しつつある現代社会では、残念ながら昔ながらの銭湯が生き残り続けるのは難しいのかもしれない。まるきん温泉にはこれからも頑張って欲しい!

〈備忘メモ〉
・特別なことは何もありません。天から降った雨をいただいて、山から木をいただいて、火をつけるくらいでしょ?人間がするのは。全部自然のおかげです。ありがたい。幸せね。
・東から登ったお日様は半日以上休まず働いて西の空に沈むでしょ。あたし、一日の終わりになるとお日様に向かって、今日もこんなに洗濯物が乾きました、ありがとうございました、ってお礼言うんです。
・日本人の美意識の根底にあるもの、それは自然です。自然を敬い、自然に感謝し、自然を手本とし、全てを受入れて日々を重ねる。幸せを追い求めてはいけません。気付くのです。どれだけ小さな幸せに気付けるか、それこそが人生の豊かさ。
・湯で人を幸せにする。