海辺の弁当屋で働く元風俗嬢 ちひろさん の物語。周囲から色目を使われることがあっても前職を隠さず飄々と自由でマイペースに生き、誰に対しても分け隔ることなく接する人柄から老若男女多くの住民たちに愛されるキャラクターを有村架純が好演しています。
多様な登場人物とちひろの関係性が描かれる中で、原作が全9巻のコミックであることから、脚本としてはひとつひとつの粒感が小さく稀薄に感じられる節はありますが、全体を通じて琴線に触れるようなストーリー性はなく気軽に観られることがこの作品の良さなのかも知れません。
ある人物がちひろに伝える「あなたはこれからも孤独を手放さずに生きていられる」の台詞からもあるように「孤独と幸福」という相反する二元論的なテーマを重苦しくなくほのぼのと描かれています。
腹の据わった人間の本懐。眼福映画と思いきや、意外と骨太な作品。