MasaichiYaguchi

人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.5
日本を代表するクライマー・山野井泰史さんに密着取材したドキュメンタリーは、美しくも厳しい“垂直の世界”に魅せられた山野井さんの生き様や、その熱い情熱、極限に挑むクライマーの矜持が、死と隣り合わせの登山を通して描かれていて胸に響くものがあった。
そして山野井さんが何度も九死に一生を得るような事態なっても生還することが出来たのは、同じく登山家である妻・妙子さんのサポートや、彼女との夫婦愛が支えになったのではないかと、スクリーンに映し出された長閑な普段の生活ぶりから伝わってきた。
世界の巨壁に単独・無酸素・未踏ルートで挑み続け、2021年には登山界最高の栄誉であるピオレドール生涯功労賞をアジア人として初めて受賞した山野井泰史さんは、その後も登ることへの挑戦は終わらず、伊豆半島にある未踏の岩壁に新たなルートを切り拓くべく奮闘したりしている。
本作で長期に渡る取材を通して山野井さんの実像に迫った監督は自らもヒマラヤ登山経験のあるジャーナリスト・武石浩明さんで、ナレーションは、今回初めて“語り手”としてドキュメンタリー映画に参加する岡田准一さんが務めている。
そのドキュメンタリーからは、世界の巨壁に「単独・無酸素・未踏ルート」で挑み続けた山野井さんの足跡、「マカルー西壁」への究極の挑戦、ギャチュンカン登頂後の壮絶なサバイバルなどの貴重な未公開映像や、妻・妙子さんへの取材、関係者の証言などを織り交ぜて孤高の登山家の魂が伝わってきます。