Yoko

イギリスから来た男のYokoのネタバレレビュー・内容・結末

イギリスから来た男(1999年製作の映画)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

 娘が事故死で亡くなったということが信じられないイギリス人の父親がその謎を解明すべく娘が暮らしていたアメリカで大暴れする作品。

 脚本、演出、キャスティングほとんどが薄っぺらい駄作。

 まず、『イギリスから来た男』という何か面白いことをやってくれそうな邦題とは裏腹に、主人公である父親は本当にただただ暴れるだけの作品であり面白くない。悪の親分に迫っていく描写があっさりしすぎており、「起承転結」のうち「起結」を繰り返し見せられているような気分に陥る。父親が暴れるためのお膳立てをするかのごとく、敵の行方の手がかりが白々しく目の前に落ちていることが不可解。全編を通して父親は娘の死にまつわる謎を追っていく体ではあるものの、こうした展開が冗長に続くためもはやその謎に興味が全く湧かないし、オチで分かるその謎も本当に薄っぺら。

 アクションシーンの酷さも目に付く。詳細は明らかでないものの、娘の年齢及び演者の年齢を考慮すると父親は還暦近い年齢なのだが、この父親があまりにも理由なく強すぎる。特に酷いシーンが二つあり、一つは悪役のガードマンと対峙するシーン。あれは父親のアクションの酷さのため、ほとんど不慮の事故といっても構わない。もう一つは終盤の銃撃シーンで、アクションの酷さもさることながら、乱暴な脚本による予定調和のために舞台から去る人物が可哀想でならない。
 父親の強さの秘密については、彼が根っからの強盗犯でムショ暮らしが長かったというアウトロー路線でキャラ付けを試みているのだが、この過去が肉体面を強くしてくれた描写等も一切ないので、何故この男がここまで強いのかという説明にもなっていない。このキャラ付けが見事に的外れなため非常に滑稽。
 映像面における特徴として一つのシーンにカット割りを頻繁に行っているのだが、「承転」を欠いている展開や、説明が説明としての役割を果たしていない今作においてはただの子供だまし。そもそもこの作品では、物語の核となる部分が描写されていないので、この演出は無に帰している。

 キャスティングについて言うと、父親はスタイリッシュで格好良いということだけ褒めることが出来る。カジュアルファッションが似合ってオシャレ。
ただ、娘の死に怒りを覚える父親が暴れるこの作品にオシャレは要求されておらず、しっかりとした下地のある説明がなされた他を圧倒する強さが必要なのだ。もっと身体を動かせる俳優をキャスティングするべきだった。

 ハードボイルドサスペンスを狙った結果がここまで功を奏していない作品も珍しい。二度と見ることはないでしょう。
Yoko

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